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Europe Insights

欧州市場を見る眼~現地からの報告
2019年03月27日
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    トピックス:欧州中央銀行(ECB)は政治的連携の必要性を指摘

    欧州中央銀行(ECB)の3月7日の政策理事会は、市場の意表を突く結果となり、欧州各国の国債価格が上昇、イールドカーブは平坦化した。ドイツ10年国債利回りは、ECBが量的緩和策(QE)を開始した2015年3月以来の水準まで低下した(図表1)。

    ECBが緩和的金融政策を継続する決定を下したことを受けて、ユーロの対米ドルレートは、1ユーロ=1.12ドルを僅かに下回る水準まで低下した。これは2018年半ば以来のユーロ安水準である。

    市場の反応は「リスクプレミアムの縮小」を反映したものとみられるが、ECBには景気を刺激するための十分な選択肢が残されていないと考えられる。ECBのドラギ総裁は記者会見で、金融政策の「効果を完全に享受する」ためには「政治的連携」が必要との見方を示した(1)。

    図表1:ドイツ10年国債利回りはECBの発表を受けて低下

    ドイツ10年国債利回りはECBの発表を受けて低下

    注:TL TROは条件付き長期資金供給オペレーション、QEは量的緩和政策

    出所:ブルームバーグ、2019年3月8日

    市場予想を下回るECBのマクロ経済シナリオ

    ECBは2019年のマクロ経済見通しにおいて、GDP成長率を+1.1%、インフレ率を+1.2%へと下方修正し、市場予想を下回る水準とした。2020年、2021年については、GDP成長率予想を+1.6%、+1.5%にそれぞれ据え置き、長期トレンドをやや上回るとしている。また、インフレ率予想は大きく引き下げられた。2020年のインフレ率予想は+1.5%、2021年は+1.6%とし、2年間にわたり目標の2%を下回るとの見方を示した。また、ECBは経済見通しのリスクは下振れ方向に傾いているとの見方を維持した。こうした新たなマクロ経済見通しを受けて、市場では緩和的金融政策が長期化するとの見通しが強まっている。

    政策金利の据え置きが長期化


    ECBは金融政策のフォワードガイダンス(将来の指針)において、政策金利を「2019年夏まで」据え置くとの前回までの文言を「2019年末まで」に変更し、政策金利を据え置く期間を長期化した。また、資産購入プログラムの下でECBが買い入れた債券が満期を迎えた際に、それを再投資する期間をわずかながら長期化する可能性も示唆された。

    銀行向け低利融資は2023年まで継続


    ECBは、全額割り当て方式により、低水準の固定金利で資金を市中銀行に提供する主要リファイナンスオペの期限を、2019年末から2021年3月へと延長した。さらに、新たな条件付き長期資金供給オペ(TLTRO-III)を2019年9月から開始することを決定し、年限2年の融資を7回にわたり2021年3月まで続けるとした。従ってTLTRO-III の終了時期は約4年後となる。この新たなリファイナンスオペによって、流動性の極めて潤沢な状態が2023年に入ってもしばらくは続くことになる。その中で銀行はより円滑に規制強化に対応することが可能となろう(2)。

    貸出条件の緩和手続きは今後決定


    与信動向への影響は限定的とみられる。TLTRO-III は供給サイド(銀行)の融資条件を緩和するように設定されているが、景気が減速している現在の課題は需要サイド(借り手)を下支えすることにある。

    TLTRO-IIIは、従来のTLTROのように貸出要件を伴い、適格ローン残高の30%とされたような条件が求められることになるが、その条件の詳細は本年9月に決定される。適用金利はECBの政策金利であるリファイナンス金利に連動しつつオペレーション期間中に変動する。従ってECBが付与する金利はTLTRO-III のプログラム実施期間を通じて上昇していくことが予想される。

    ローン残高の増加率目標ならびにリファイナンス金利への上乗せ幅は後に発表されことになっている。これは、ECBが経済情勢に応じて、融資条件を定めるための時間的余裕を確保するためである。経済情勢が悪化すれば、TLTRO-III の手順は、銀行の利用拡大を目指すものとなり、ECBのバランスシートの正常化は先送りされることになる。反対にユーロ圏経済が安定ないし回復していくのであれば、TLTRO-III の条件を緩和して利用を拡大させるリスクを背負う必要はなくなる。

    現時点では、TLTRO-IIで4年であった年限が2年に短縮されたことや、イタリア、スペイン、ポルトガルが中心であった2016年当時よりも適格ローン残高が減少していることから、おそらく今回の TLTRO-IIIを銀行が利用する規模はこれまでよりも縮小するとみられる。従って与信動向への影響は限定的と考えられる。TLTRO-IIIは供給サイド(銀行)の融資条件を緩和するように設定されているが、現在は景気が減速している中で需要サイド(借り手)の下支えが課題となっている。

    政治的連携の必要性


    すでに政策金利はマイナスの領域にあり、資産購入プログラムにも制約が生じたため、ECBにとり政策の選択肢は他の主要国中央銀行に比べてますます少なくなったと考えられる。先の記者会見においてドラギECB総裁は、ECBは資産購入を実施し保有資産をより長期にわたって維持するため、現在の金融条件は「とても緩和的である」と強調した。その上で「政治的連携」が全ての面で必要であるとの考えを示し、これ以上の決定的な政策の選択肢はないことを暗に強調した。また、EUの資本市場同盟と銀行同盟が完全とは程遠い状況にあることや、昨年は構造改革に進展がなかったこと、さらに「成長志向財政」が望まれることなどを、ドラギ総裁は記者会見を通じてEU各国政府に対して指摘している(1)。

    (1) 欧州中央銀行(ECB)記者会見2019年3月7日
    (2) 前回のTLTRO-IIの残存期間は6月には1年未満に縮小し安定調達比率(NSFR)
    を満たさなくなるため、銀行は他の資金調達手段を選ぶ必要があり、その調達コストはおそらく現在よりも高くなるだろう。NSFR指標は長期安定的な資金調達額を所要安定調達額で除して得られる比率であり、バランスシート外の債務も含まれる。今のところNSFRは欧州の全ての銀行に法的拘束力を有するものではない。NSFRが盛り込まれた第5次資本要求指令(CRD V)は現在、EUの法制化プロセスの途中にある。

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