Europe Insights
要旨
- ユーロ圏では、建設コストと建設業生産高にかい離が見られ、エネルギーと原材料価格の上昇に伴うさまざまな影響が生じている。
- 建設コストと借入金利に安定化の兆しはあるが、借入コストの上昇が引き続きこのセクターにとり課題となっている。
- 新たな金利環境により、建設コストは2024年半ばまでに安定する可能性はあるが、持続的な回復は借入コストの上昇と国家間の格差を解決できるかに左右されよう。
困難の中でも建設セクターに回復の兆し
- コロナ禍とロシア・ウクライナ紛争による2回の連続したコスト・ショックは、ユーロ圏の建設コストに悪影響を与えた。このショックはユーロ圏の経済全体に波及したが、その度合いは国により大きく異なった。一例として、住宅価格の上昇率はギリシャ (上昇率20%) とポルトガル (同14%) で顕著となり、またスペイン (同7%) では緩やかな上昇が見られた。一方、価格の下落がドイツ (下落率11%) とフィンランド (同7%) で生じた(図表1)。
- 全体として、コロナ禍前から2022年第1四半期までに名目住宅価格はユーロ圏で18%上昇したのに対し、米国では37%の大幅な上昇となった。しかし、過去2年間でエネルギーおよび資材価格や資金調達コストが高騰し、これが建設セクターに重荷となっている。
図表1:2022年第1四半期以降の主要国における名目住宅価格の変化率 (%)
出所:ユーロスタット、LSEG、2023年9月30日現在
- 建設業生産高に関しては2022年第1四半期以降、北欧にて急激に落ち込んだが、南欧、特にギリシャでは増加が見られた(図表2)。足元では、イタリア、スペイン、ポルトガルが回復力を示す一方、殆どの国において建設業生産高は引き続き減少している(図表2)。
図表2: ユーロ圏諸国の建設業生産高の変化率 (%)
出所:OECD、ユーロスタット、LSEG、2023年12月31日現在
与信フローは底入れ
- こうしたなか、希望の光も見られる。2023年第4四半期における景況感調査では安定化の兆しが示唆された。2023年初めに30%近く急増した建設コストは、12月までに4.5%に鈍化した。同様に、家計の住宅購入にかかる借入コストは9月以降4.3%付近で安定しており、ユーロ圏の与信フローの低下に歯止めが見られる(図表3)
- しかし、回復への道のりは依然として不透明である。1月の景況感調査では、高止まりする借入コストが2024年の建設セクターにとり重大な課題となるなど、建設活動のさらなる悪化が示された。
図表3: ユーロ圏における家計および非金融企業への与信フロー (月次ベース、十億ユーロ)
出所:LSEG、欧州中央銀行、2024年2月22日現在
トンネルの終わりの光
- ギリシャやポルトガルなどの国では借入コストが6%を超えるなど、同コストの上昇に直面しているが、建設セクターは特に南欧諸国で回復力を示している。2021年以降1,960億ユーロを投入し、特にイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャに恩恵をもたらした復興・強靭化ファシリティ(RRF)のような政策は、重要な支援となっている。
- RRFの63%は2026年まで未だ支出されていないため、特に非住宅および土木プロジェクト (道路、鉄道、通信、水道) における建設支援が継続されることが予想できる。住宅および非住宅部門における建設許可の交付を加速するなど、供給側の政策措置も導入されている。
- 借入コストの上昇は引き続き懸念される一方、最近の長期債の利回り低下は楽観的な見通しをもたらしている。調査レポートによると、金利が実体経済に与える影響は通常12~18ヶ月のタイムラグを伴って顕現化する。欧州の長期債利回りは2023年末にかけて低下したため、2024年には建設コストが安定することが期待されているが、それは恐らく本年後半になると考える。
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