2020年下期 投資環境見通し
2020年下期 投資環境見通し
加速する経済社会の新トレンド
2020年後半の見通し
世界では、ウイルス検査機能が拡大し、ロックダウン解除の動きが増えています。2020年後半を読み解く参考になると考えます。当面は、引き続き賢い分散投資と回復力のあるポートフォリオがカギとなるでしょう。
2020年に起きたこと
「経済の急停止」により、リスク回避の動きが金融市場に広がりました
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2020年に起きたこと
- 米ドルや米国国債など、安全資産とされる資産クラスが上昇し、社債のクレジット・スプレッド(国債との利回り格差)は拡大しました
- 投資家は過敏に反応し、株式市場は急落。これは世界に波及しました
- 株式市場は、先進国市場、新興国市場ともに、30%以上下落しました(米ドルベース)
背景は何か?
政府・中央銀行の対応
金融市場への影響
旅行業、運輸業、製造業など様々な産業が停止状態となりました。加えて原油価格が急落し、金融市場を一層不安定なものとしました。株式などリスク資産の価格はかつてない速さで下落しました。
3月中旬以降、市場は安定を取り戻し、上昇相場が始まりました。市場の反発の度合いは資産クラスや国・地域によって異なります。市場は戻りつつありますが、世界経済が受けた打撃は強烈なものでした。2020年上半期は、まれにみる混乱状態となりました。
2020年下半期の投資環境見通し
2020年に入り、世界経済は急速に縮小しましたが、この先は緩やかな景気回復が持続すると考えられます。 この「景気の急速な縮小の後の緩やかな回復の持続」は、ナイキ社(NIKE)のロゴマークである「Swoosh」に似た形状で表すことができます。
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2020年下半期以降の世界経済シナリオ
ベアマーケット(弱気相場)は急速に反発し、上昇へ転じました。多くの投資家は「経済が冷え込んでいるなかで、株式市場が上昇するのは非合理」と考えています。しかし、こうした見方は正しいのでしょうか?
市場は将来を見据える
第一に、金融市場は将来を見据えて動くのに対し、経済指標は景気に遅行するものであることを思い出しましょう。
例えば、失業率は、株価が底入れした後も上昇を続けるのが一般的です。新型コロナウイルスのパンデミック初期に、株価はおおよそ3分の1下落するなど、市場はすでに最悪の状況を織り込んでいました。
大胆な政策支援
第二に、各国の政策当局の予想以上に大胆な景気支援策を受けて、景気の先行きへの悲観論が後退。投資家心理は持ち直しました。
比較すると、2008年の世界金融危機(リーマンショック)時は米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを実施するまで2ヶ月かかりました。今回は2週間足らずで利下げが実施され、革新的な政策が次々と打ち出されています。
先行指標としてのアジア
第三に、世界の景気指標では依然としてマイナスの数字が並んでいますが、中国経済の一部のほか、アジアの中で工業化が進んでいる地域では、大方の予想より早く景気の回復が始まっています。
アジア経済は、今回の危機を通じて世界経済の先行指標の役目を果たしており、最新の景気指標は、通常の経済活動再開に向けた明確な道筋を示しています。
市場の特性を考慮
最後に、株式市場は「経済そのもの」ではありません。観光業、旅行業、レストランなど、多くの産業が今回の新型コロナウイルスの感染拡大により大きな打撃を受けましたが、これらの産業が経済全体に占める比率は大きくはありません。また、米国株式が大幅に上昇しているように見えますが、株価指数の中での業種比率の差を考慮すれば、他市場との差はそれほど大きなものではありません。
今後の展開
2020年に入り、世界経済は急速に縮小しましたが、この先は緩やかな景気回復が持続すると考えられます。 この「景気の急速な縮小の後の緩やかな回復の持続」は、ナイキ社(NIKE)のロゴマークである「Swoosh(スウッシュ)」に似た形状で表すことができます。
世界景気の回復シナリオ
当社が描く景気の基本シナリオは、この先のウイルス検査の拡充、感染者の追跡の強化、局所的な感染拡大、2021年年央頃のワクチンの実用化、そして2021年半ばまで続く一部経済活動の制限、などを前提にしています。このシナリオでは、2020年4-6月期にはすでに景気は縮小から回復に転じています。2021年の年末には、新しい経済回復の軌跡が確認されていると思われます。その際の景気回復のペースは、これまでよりは緩やかであるものの、トレンド成長率に近いものとなるでしょう。
下振れリスク
危機への対応力は国・地域や経済によって異なります。例えば政策の柔軟性などがあげられます。また、景気下振れの要因として、感染拡大の第2波のリスクがあります。さらに、貿易や労働市場の停滞などで、長期にわたり経済の不調が続く懸念があります。
投資機会を厳選
投資家は分散投資の重要性を、今一度しっかりと考える必要があります。オルタナティブ資産への投資は、市場が反転した時にポートフォリオを守る役割があると考えます。また、国債より利回りが高い優良社債にも投資価値が見出せます。ほかに、地域配分、スタイル、セクターも重視します。
持続可能な投資へ
近年、社会的責任投資が注目を集めていますが、今回のコロナ問題により「持続可能な投資」を考える重要性が一段と高まっています。ロックダウン(都市封鎖)による自然環境の変化(大気汚染の軽減など)も、低炭素経済への移行を加速させるきっかけになる可能性があります。
マルチアセット運用の投資環境
現状の環境の中で投資を行う最善の方法は、比較的安定的な資産(再度の市場の下落に耐える)とリスク資産(中長期の市場の上昇の恩恵を受ける)を効果的に組み合わせたポートフォリオを構築することです。この組み合わせによるポートフォリオの構築により、様々な相場展開でも良好なパフォーマンスを維持できると考えます。
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金融市場が受けた影響
2020年に入ってからの市場動向は、2つの際立った局面に分かれます。まず、3月のリスク資産の暴落です。市場下落の速度は驚異的でしたが、資産間の相対リターンの差も暴落時特有のものでした。
この後、リスク市場は上昇に転じましたが、この市場回復の初期の段階はよくみられる普通の展開でした。まずリスク資産の中でも比較的ディフェンシブ(相対的に安定的)とされる資産が上昇に転じました。しかし、リスク資産の価格が上昇する中で、国債市場は、世界的に低金利の環境であったにせよ、年初来の高値(利回りは低下)近辺に留まりました。また、金価格も堅調でした。これは、過去に経験した「リスク資産市場が回復し、投資家のリスク選好度が高まる中で、安全資産とされる国債市場が下落する」という典型的な展開とは対照的でした。なお、リスク資産中でも、米国株式など、他の株式市場と比べて安定性が高いとされる市場が好調でした。
中国経済を基準として世界経済の回復を測ることができるのか?
中国経済が正常な状態に戻りつつあることは朗報です。中国は、製造業中心の経済であるため、サービス主体の経済よりも経済活動の再開が容易です。旅行や娯楽などのセクターが依然として低迷している状況を敢えて取り上げる必要はありません。中国で国民の行動の規制が緩和されたとはいえ、人々は直ちに以前のように外出や消費をするわけではありません。
このように、中国経済の一面を見たのみで、中国経済が順調に正常化に向かっていると判断するのは、楽観的過ぎる可能性があります。もし、世界景気の回復が遅れた場合、景気循環に関連した問題発生のリスクが高まります。例えば、当社では社債のデフォルト・リスクが高まることを注視しています。現時点では、市場は企業のデフォルト・リスクは低いとみているようです。
世界の混乱が続く中での投資
依然として注視すべきリスクは残っているものの、これまでの市場の下落により、長期的な視点では投資の好機をもたらしていると考えます。現状の環境の中で投資を行う最善の方法は、比較的安定的な資産(再度の市場下落への耐性)とリスク資産(中長期の市場上昇による恩恵)を効果的に組み合わせたポートフォリオを構築することです。この組み合わせによるポートフォリオの構築により、様々な相場展開でも良好なパフォーマンスを維持できると考えます。
12ヶ月未満の短期的視点では、3月から上昇相場が続いてきたことから、一度リスクを減らすことが得策といえそうです。今年後半に市場が短期的な調整局面を迎えた場合、再び魅力的な投資の機会となるでしょう。
当社は、中央銀行のサポートを得られる資産クラスを選好します。利回りが魅力的であり、FRBと欧州中央銀行(ECB)の買い支えによって下振れリスクが抑えられる投資適格社債をオーバーウェイトとします。
先進国国債への投資比率は減らしています。バリュエーションの観点から魅力が低く、金利はゼロに近い水準でヘッジ資産としての魅力は乏しい一方で、債券価格は引き続き一定水準内で変動しています。リスク資産の市場が反落する場合、ポートフォリオを守るにはオルタナティブ資産(代替資産)が有効だと考えます。また最後に、金のほか、米ドル、スイスフラン、円などの通貨を含めた他の安定資産への分散投資を行い、ポートフォリオを守ることが重要です。
株式の投資環境見通し
企業収益や配当は大打撃を受けました。しかし、当社の株式バリュエーションモデルは、「株式のリスクプレミアム」(現金や短期国債などのゼロ・リスクの資産に対して株式投資から期待される超過リターン)は引き続き良好であることを示しています。
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2020年前半の株式市場の動向
1月下旬に新型コロナウイルスの感染が広がり、株式市場は、先進国市場、新興国市場ともに複数回の急落を繰り返し、3月中旬までの期間に株価はおおよそ3分の1程度まで下落しました(米ドル換算)。同時期に原油価格が急落したことも、市場の危機感に拍車をかけました。
その後は各国政府と中央銀行が、様々な財政政策や金融政策を打ち出した結果、株式市場は上昇に転じています。しかし、株価の回復状況は、市場や業種によって明暗が分かれています。米国のテクノロジー関連株や中国株(国内市場)は下落分のほとんどを取り戻しました。一方で、一部の新興国(インド、インドネシア、フィリピン、ブラジル、コロンビア)は通貨の下落、現地の経済状況の悪化、新型コロナウイルスの拡大が収束していないことへの懸念を背景に、現在も停滞傾向にあります。
2020年後半の株式の投資機会は?
今回の危機では、地域や国ごとの株価動向の差が明らかになり、改めて市場を厳選した投資を行うことの重要性が浮き彫りになりました。当社は、世界の株式市場の中で、引き続きアジアを選好し、中でも中国、韓国、台湾、香港などの産業化が進んだ市場に注目していきます。バリュエーションが魅力的なことに加え、これらの国・地域はコモディティー(商品市況)や原油への依存度が低く、新型コロナウイルス危機に対して経済面および医療面での対応が優れていることが明らかになったからです。
企業収益や配当は大打撃を受けました。しかし、当社の株式バリュエーションモデルは、「株式のリスクプレミアム」(現金や短期国債などのゼロ・リスクの資産に対して株式投資から期待される超過リターン)は引き続き良好であることを示しています。この予測結果に影響するような “未知の要因” が複数存在することは否定できませんが、企業収益と株主配当に短期的な打撃はあるにせよ「長期的視点では、現状の株式資産は割安である」と言えるでしょう。
業態としては、おそらく「根強い需要はあるものの、サプライサイド(生産・供給体制)の回復に時間がかかる業種」では、業態の回復状況はまちまちとなり、一部の分野の回復が遅れる可能性があります。なお、新型ウイルスに対するワクチンの開発などで大きな動きがあれば、株式市場の一段の上昇のきっかけになることは明らかです。
中長期の展望は?
新型コロナウイルスの急拡大を受けて、人々の行動、経済の需給構造、消費の形態、環境問題に取り組む姿勢に多くの変化が生じています。全てが永久に影響を受け続けるというわけではありませんが、一部は、長期にわたり、既に始まっているトレンドを一段と加速させるでしょう。例えば、複数のEコマース(インターネットなどを使う電子商取引)企業は、ビジネスモデルが確立しており、将来的に消費行動の変化の恩恵を受ける可能性があります。
同様に、各国は医療インフラを強化し、機能を高め、適度な対応余力を持つことが求められており、関係する業種には朗報といえます。
債券の投資環境見通し
2020年の後半を迎え、債券にとって最も注視すべきことは先進国での「超低金利の長期化」が改めてクローズアップされ、国債の投資収益が一段と低下することです。
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何がテーマであったのか?
新型コロナウイルスの感染拡大は、経済や金融システムの破壊をもたらすようなものではなく、これまでの多くのショッキングなニュースや重大な出来事と同様に、債券市場で既に起きていた動きや傾向を加速させるものとなるでしょう。例えば弱い労働市場がもたらす低インフレ、中央銀行により異なる支援策がもたらす経済状況の格差、責任投資の加速などのトレンドや傾向がより明確になりつつあります。
しかし、新型コロナウイルスの世界的拡大が債券市場に衝撃を与えるものであったことは事実であり、一部の市場のトレンドは逆転しました。例えば、企業のデフォルトの増加と格下げに伴うクレジット(信用)の引き締めや企業のバランスシートを縮小させる動きなどです。
債券市場にとって2020年は?
2020年の後半を迎え、債券にとって最も注視すべきことは先進国での「超低金利の長期化」が改めてクローズアップされ、国債の投資収益が一段と低下することです。
社債については、先進国で中央銀行による支援プログラムの対象になる企業とそうでない企業に二分されると予想しています。企業は社債の低い表面利率と割安な資金調達を目指し、投資適格級の信用格付けの維持に必死になるでしょう。
中央銀行の支援プログラムの対象外となる低格付の企業は、特定セクターの問題(例えば、小売、レジャー、運輸、エネルギーなど)に加え、資金調達の難しさなど大きな課題に直面すると予想されます。
地域別には、利回りが上昇したアジア債券に、魅力的な相対価値が認められます。アジアを選好する理由は、金融政策と財政政策が迅速に実施されたことに加え、効果的な新型感染症拡大防止の対応策を取れることです。アジア市場は公的債務の増加を吸収する余裕があり、社会の規律とテクノロジーの幅広い利用という点でも、現状の環境への備えが整っています。
ただし、企業や業種によって状況が異なるだけに、銘柄選択が重要だといえます。
ハイ・イールド債については、欧州よりも米国を選好します。欧州は新型コロナウイルスの感染が広範囲に及び、経済への打撃が大きかったこと、米国と比べて財政面での制約が大きく景気支援策の足かせになることなどが懸念されます。
当社の債券市場見通しに関する主なリスク
企業と政府が債務を積み増しており、今後は過剰債務問題が長期の重要な留意事項となります。長期的な経済の回復を目指すにあたり、あまり幸先の良いものではありません。
景気回復が非常に緩慢なものに留まるという悲観的なシナリオでは、過剰債務を背景に企業は設備投資を積極的に行わず、政府側は債務削減のために増税せざるを得ない状況になるでしょう。この状況では利回りは一段と低下しますが、社債にとって非常にネガティブなシナリオというわけではありません。
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