インド:S&Pが「BBB」に格上げ~インド市場への資金流入増加が見込まれる
ご参考資料
2025年08月18日
インド国債の格上げ
- 8月14日、S&Pグローバル・レーティング(以下、S&P)はインドの長期ソブリン信用格付けを「BBB-」から「BBB」に引き上げ、見通しを「安定的」としました。また、同社は短期信用格付けを「A-3」から「A-2」に引き上げました。
- S&Pは格上げの理由として、インド政府の財政再建への取り組み、強固な経済基盤、中期的な成長を支える持続的なインフラ支出、そしてインフレ期待の管理に向けた金融政策の強化などを挙げました。
- S&Pが見通しを「安定的」とした背景には、政策の安定性と高水準のインフラ投資に伴い、インドの長期的な成長見通しが期待できるという同社の見解を反映しています。さらにS&Pでは、政府債務の抑制につながるインドの慎重な財政・金融政策に関しても前向きに評価しています。
- インドは、対外収支、中央銀行の独立性、穏やかなインフレ、政治的安定、そして経済改革においてS&Pから高い評価を得たうえ、経済成長、金融政策手段の効果、政府の財政健全化へのコミットメントが一段と高く評価されました。一方、中央および州政府を合わせた一般政府の財政赤字ならびに債務残高や、利払い費の増加を受けて、インドの財政状況は脆弱であると指摘されました。これらを総合的に勘案した結果、S&Pは今回の格上げを決定したと説明しました。
- S&Pは、一般政府の財政赤字の対GDP比が6%未満で推移するようであれば、一段の格上げにつながる可能性があると述べました。この目標達成には州政府の財政赤字が対GDP比で3.3~3.4%と予想され、中央政府の目標値が4.4%であることを踏まえると、S&Pでは現状において困難であると見ています。しかしながら、S&Pは2020年代末までに達成される可能性が高いという見方を示しました。
今回の格上げを受けたインド市場への影響
- S&Pの格上げは、力強いGDP成長、対外収支の改善、構造改革を通じた効率性の向上、そして過去に比べて経済の安定性の高まりを受けたものと考えられます。
- インドでは内需主導の経済成長が続いています。世界的な成長懸念、貿易戦争、地政学的緊張が見られる中で、今回の格上げは投資家センチメントの改善につながると見ています。
- 「BBB」という一段と高い投資適格のカテゴリーに移行することに伴い、インドのリスクプレミアムは低下し、インド市場への世界的な資金流入が見られるとともに、同国の債券発行による資金調達コストは下がるものと考えられます。
- インドの格上げはS&Pにおいて18年ぶりとなり、ムーディーズ・レーティングス(以下、ムーディーズ)の「Baa3」、フィッチ・レーティングス(以下、フィッチ)の「BBB-」といった主要機関の格付けよりも1段階上の格付けとなります。しかし、他の格付け機関による格上げの可能性も考えられます。フィッチはムーディーズ(2020年にインドの格付けを「Baa2」から「Baa3」に引き下げ)と比べて前向きな姿勢を示しており、フィッチによる格上げが期待されています。
主要格付け機関によるインド国債の格付け
S&P | フィッチ | ムーディーズ | |
BBB | BBB- | Baa3 | |
アク ション | 格上げ | 格上げ | 格下げ |
実施日 | 2025年8月 | 2006年8月 | 2020年6月 |
出所:S&Pグローバル・レーティング、フィッチ・レーティングス、ムーディーズ・レーティングス、ブルームバーグ、2025年8月14日
インドの国債利回り
- インド債券では、今回の格上げは好材料と言えます。これは財政赤字縮小への期待と世界的な投資家心理の改善を通じてインド債券への投資増加が見込まれると同時に、通貨インドルピーの強含みが期待され、さらなる投資が促進されると考えます。
- インド債券はここ数年、JPモルガンの新興国市場指数へのインド国債の組み入れに支えられ、外国人投資家から強い関心を集めてきました。今回の格上げを受けて、外国人投資家の関心は一段と高まるものと予想されます。
- 格上げ発表後、インドの10年物国債利回りは低下し、今後においては米国の10年物国債利回りとのスプレッドが縮小する可能性があると思われます。
- 比較的高い利回りと投資適格格付けを背景に、インド債券は世界の債券市場において際立っていると見ています。今回の格上げにより、インド債券の魅力度は一段と高まると考えます。高水準の利回りや良好な信用力に加え、安定した通貨見通し、インフレ圧力の緩和、力強い内需などがインド債券市場の支援材料になっています。
- インド債券については、ファンダメンタルズの改善、政策スタンスに対する前向きな評価、金利の良好な見通しに伴い強気のスタンスを維持しています。足元のインド国債の軟調な推移とインドルピーの弱含みを踏まえると、ポートフォリオにおけるインド国債へのアクティブなアロケーションに対する根拠が明確になったと考えます。
- インド株式では、格上げは長期的にプラスに働くと見ています。インドにおける債券発行による資金調達コストの低下は発行体の資金調達源の多様化を促すものと思われます。こうしたなか、資金調達コストの低下は資本コストの低下を通じて企業の収益性の向上につながると考えられます。
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