インド:24年度予算案のハイライトと 各資産クラスの見通し
- モディ首相率いる政府は6月の接戦となった総選挙を経て、初となる国家予算案を発表しました。
- 予算案発表前には、与党インド人民党は総選挙にて過半数を獲得できなかったため、連立相手に対して配慮する必要に迫られたことで、財政健全化路線を堅持するという政府の計画が危うくなるのではないかという懸念がありました。
- しかし当予算案において、財政赤字の削減を目指しながらも、成長と改革への方向性は改めて確認され、こうした懸念は和らぎました。
- 当社では、当予算案を「リセット予算」と名付けたいと考えます。政府は財政健全化と成長に加えて、経済と雇用に再び焦点を当てることを目指しています。
- モディ政権3期目の当初予算案は、マクロ環境の安定と中期的な経済成長のバランスを図りながら、幅広い分野において政策の継続性を示しました。
- 当予算案では、2月に発表された暫定予算と同様の設備投資目標が維持されました。インド準備銀行からの配当金の増加は、財政赤字の削減と、雇用創出や技能訓練制度、農業・食料関連支援、州への特別支援、低価格帯の住宅への信用支援などの重要分野への支出増加に活用されています。
- 政府は、24年度の財政赤字の対GDP比見通しを23年度の5.6%(実績)から4.9%に引き下げることで、財政再建への取り組みを改めて表明しました。25年度については4.5%の目標を下回ると予想しており、これは実現可能と当社では見ています。
- 26年度以降、中期的な新たな財政再建の道筋は財政赤字の縮小がベースとなっており、中央政府債務の対GDP比は減少傾向を維持することが見込まれます。これにより、政府は内外のマクロ環境に基づいて適切な財政措置を決定するという柔軟性が高まると考えられます。
- 当予算案においては、当面の経済問題に対処するだけでなく、今後5年間の政策のロードマップも策定されました。また、政府は州政府と連携して、生産要素(土地、労働、資本、起業家精神)における生産性と市場および業界の効率性に重点を置いた次世代の改革を伴う、長期経済発展に向けた経済政策枠組みを策定することを公約しました。
- 全体として、今回の予算案はインド経済に対する当社の前向きな見方を裏付けています。特に、雇用と技能向上への重点強化、製造業の成長を促進するための中小企業の事業運営のしやすさ、インフラ開発を支援するための設備投資の継続的な重視などは特筆すべき点と考えます。さらに、インドに投資する外国企業に対して、同国での生産拠点の設置を促すため、法人税率を40%から35%に引き下げることなども注目されます。
- 慎重な財政・金融政策はマクロ環境の安定を確保し、持続的な成長軌道の基礎を形成するのに役立つと考えます。
出所: インド国家予算、ブルームバーグ、HSBCアセットマネジメント、2024年7月23日
インド: 財政収支の対GDP比
注:24年度は見通し、25年度は目標。プライマリー・バランスとは過去の借金の元利払いを除いた支出額と、国債などの発行によって得る分を除いた収入額の、差額のことを指す。
出所: HSBCアセットマネジメント、ブルームバーグ、2024年7月
インド予算
出所: HSBCアセットマネジメント、ブルームバーグ、2024年7月
各資産クラスの見通し
株式
- キャピタルゲイン課税の税率引き上げに関する項目は当初、株式市場のボラティリティを招きましたが、税制の簡素化は市場にとり長期的にプラスであり、これまでの堅調な企業収益の見通しを一段と強化するものと当社では見ています。
- インドの長期的な経済成長見通しについては引き続き強気な見方をしています。インド株式の予想PERは24倍と高水準にありますが、これは今後2年間において年率10%台半ばの利益成長率が裏付けとなっています。国内投資家からの資金流入は引き続き堅調で、市場を支えています。
- 総選挙の結果を勘案して、ハードのインフラへの重点は維持しつつ、教育、技能訓練、訓練機関、補助金付きのインターンシップといったソフトのインフラにも視野を広げる方向性にあるものと思われます。何れにしても、設備投資が引き続き推進されると考えます。資本財セクターは、設備投資拡大のテーマから引き続き恩恵を受ける可能性が高いと見ています。
- 雇用創出と中所得者層の強化、特に若者と農村部に重点を置くことは、当予算案における主要テーマであると言えます。このような政策方針は、低中所得者層の消費を促し、生活必需品と自動車セクターに恩恵をもたらす可能性が高いと見ています。
- 当社の株式戦略では、インドの長期的な経済成長を活かすため、景気循環および成長セクターに対して適度に傾斜しており、金融および不動産セクターを特に選好しています。
債券
- 本年2月の暫定予算と比較すると、市場からの借入総額は0.1兆米ドルほど減少しました。このため、債券市場への当面の影響は極めて限定的となりました。
- 同盟国を満足させるために政府が財政慎重路線から逸脱するのではないかという懸念がありましたが、当予算案は財政赤字の縮小を加速させ、財政慎重路線を継続していることを示しています。これは債券市場にとり長期的にはプラスの影響を与えるものと考えます。
- 政府が引き続き成長、インフラ、製造業に重点を置いているため、債券市場は引き続き魅力的であると見ています。また、外国ポートフォリオ投資家(FPI)による資金流入はインドルピーを下支えすると思われることから、現地通貨建て債券には特に追い風になると考えられます。
- 一方、当予算案は主要債券指数への組み入れに関連する債券フローに特に影響を与えないと考えます。
出所: インド国家予算、ブルームバーグ、HSBCアセットマネジメント、2024年7月23日
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