インド債券市場 ~期待が高まる時期の到来へ
インドの債券市場は活況を呈しており、今後も堅調な推移が続く見込み
- JPモルガンが2023年9月に発表したインド国債のグローバル債券指数への組み入れは、最も待ち望まれていた転換点の1つに数えられると考えます。今回の組み入れは、インド債券市場への受動的な大幅な資金流入をもたらすだけでなく、インド債券への戦略的配分の契機にもなると見ています。
- 2024年6月28日から、インド国債のグローバル債券指数への組み入れによる好影響が見られると思われます。JPモルガンの指数組み入れ発表以降、2024年6月現在、インド国債には100億米ドルを超える海外からの流入が見られました1。
- インド国債の利回りは、他の新興国国債の中では比較的高い水準にあります。さらに、過去6ヶ月間の利回りと通貨の動向からも、インド国債が他の債券市場の中でも優れたパフォーマンスを示していることがわかります(図表1および図表2)。
図表1:10年物国債利回りと過去6ヶ月間の利回りの変化幅
出所:ブルームバーグ、2024年6月20日
12024年6月18日時点のブルームバーグの推計
図表2:過去6ヶ月間の米ドルに対する通貨の騰落率 (%)
出所:ブルームバーグ、2024年6月20日
インデックス追随の投資家と戦略的投資家の双方からのインド国債への関心の高まりに伴い、1,000億米ドルの流入が見られる可能性
- インド債券市場は、海外の戦略的投資家による多額の投資の恩恵を受けるための必要条件が整っていると、当社は考えます。政府系ファンド、中央銀行の準備金管理者、年金基金などの大手機関投資家は、新興国への配分の一環としてインド債券市場に注目し、より精通するようになると思われます。特に、世界の大手機関投資家は、運用上の問題が解決され、アクセスが一段と容易になるにつれ、インド債券市場の多くのプラス面に着目し、新興国のインデックス追随型の配分だけでなく、インド債券への戦略的配分を検討し始めると考えられます。
- 当社は、インデックス追随型の配分と戦略的配分により、今後3~5年間で約1,000億米ドルの資金流入(インデックス関連で約500億米ドル、戦略的配分で約500億米ドル)が見られると予想しています。 とはいえ、こうした流入を経てもインド国債の外国人投資家による保有比率は8~9%程度にとどまり、他の新興国市場と比べると引き続き低い水準になると見ています。
直近の金融政策決定会合や総選挙結果などを受けた今後の金利見通しについて
- 米国市場は「長期にわたる高金利」に備えていますが、過去にもそうした環境下で好ましいデータに対する反応が過剰になる実例が見られました。今後数ヶ月において、経済成長、雇用、インフレに関するデータが軟化すれば、市場は将来の積極的な金融緩和を織り込み始めると思われます。
- インド準備銀行(RBI)においても今後3~6ヶ月にわたり流動性を不足から過剰へと移行させ、銀行間オーバーナイト金利は誘導目標レンジの上限から下限にシフトする可能性が高いと考えます。このため、イールドカーブは、流動性の拡充に伴いスティーブ化すると見ています。加えて、2025年上半期に50bpsの利下げが見込まれることから、銀行間オーバーナイト金利は75~100bps低下する可能性があります。
- 新政権発足後における主な焦点としては、農村部の懸念に対処するための追加支出や、関連する政策への追加予算の可能性が挙げられます。ただし、新政権はこうした政策による影響を認識し続け、慎重な措置を講じるものと当社では見ています。
- マクロ環境においては幅広に引き続き安定を示すものと思われ、これが今後のインド債券の利回り低下に対する下支え要因になると考えます。
- 財政政策およびインフレ期待に多少の修正が見られる可能性はあるものの(図表3で強調されているように)、以下の7つの好ましい要因に基づき、当社は引き続きインド債券に対して前向きな見方を維持しています。
① RBIが保有する外貨建て資産の利子収入が大幅に増加し、この高水準の利子収入が国の財源に振り替えられたこと
② 24年度の財政赤字の対GDP比が5.1%に抑制されていること
③ 良好な国債需給動向
④ インド国債のグローバル債券指数への組み入れに伴う海外からの資金流入
⑤ S&Pグローバル・レーティングによるインドのソブリン格付け見通しの引き上げ
⑥ 例年より良好なモンスーン期の降雨量からインフレ鈍化が予想されること
⑦ 政府とRBIによる流動性に関する前向きなシグナル
図表3:各項目の現状における債券市場へのインパクト
出所:HSBC Asset Management (India) Pvt Ltd
インドルピーの動向が鍵
- 前向きな金利見通しとは別に、インドルピーの動向は外国人投資家が勘案すべきもう1つの重要な変数です。インドルピーのボラティリティは、経常収支赤字の状況とその見通しの改善、対内直接投資とポートフォリオ投資を通じた外国資本の流入、RBIによる外貨準備高の増加などにより抑制されていると考えます(図表4)。こうした好ましい要因により、2023年以降、インドルピーは良好なパフォーマンスとなっています。インド国債のグローバル債券指数への組み入れによる資金流入が為替市場に多少影響を与えるとしても、通貨のボラティリティは引き続き低いと見ています。
図表4:RBIは外貨準備高の積み増しを継続することにより、インドルピーのボラティリティは抑制されるだろう
出所:IMF、CEIC、ブルームバーグ、2024年6月
グローバルのポートフォリオにおける分散化の重要性
- インドではコロナ禍後のインフレ問題が限定的であり、国内経済は大きな物価上昇圧力を受けずに数年にわたり成長軌道に乗っています。このため、インドの金融政策は先進国市場とは異なる道筋をたどっています。
- インド国債とグローバルの投資適格債券の相関関係は極めて低い水準にあります。従い、投資家はグローバルのポートフォリオにインド国債を組み入れることで、分散化の恩恵を一段と享受できると考えます。
ボラティリティとインド債券への投資価値
- インド債券市場への外国人投資家の参加拡大に伴う長期的な影響は、今後数年間にて利回りの変動性が高まる可能性があることです。
- 外国人投資家は、グローバルなマクロ経済におけるファンダメンタルズの変化に対して債券価格が過剰反応するような様々な取引戦略を取る可能性があります。また、金融危機の際には、一部の外国人投資家の短期的な投機的行動により、資金が突如大幅に流出することもあり得ます。
- しかし、インド債券市場は大規模で流動性が高いという事実は投資家にとり望ましい状況と言えます。つまり、予想される海外からの資金流入後でも、他の殆どの新興国債券市場と比較して外国人投資家の比率は依然として低く、国内投資家が引き続き市場を支配し、より先進国市場に似たような状況になるということです。また、インド債券市場は少なくとも当面、国内要因が主たる牽引役になると思われるため、外国人投資家は分散化のメリットとグローバルの投資適格債券などとの低い相関関係を享受できると考えます。
- 今後、国内外のインド債券投資家にとり期待が高まる時期が到来し、インド債券市場は外国人投資家による投資拡大や新たな展開を迎えるものと思われます。
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